トキソプラズマ症
トキソプラズマ原虫による人獣共通感染症で、ネコをはじめ、ほとんどのほ乳類、鳥類に感染します。妊婦さんの初感染で、流産を起こす病気として広く知られていますが、感染経路については誤解も多いので、整理してみました。
症状(ヒト)
健康な成人の場合は、感染しても症状は出ないか、数週間のあいだ軽い風邪のような症状が出る程度です。免疫抑制状態にある場合(エイズ患者など)では神経障害や心筋炎、肺炎などを起こし重症化しやすい。妊婦さんが初めてトキソプラズマに感染すると、異常産(流産・死産)や先天性トキソプラズマ症児出産を来すことがあります。
疫学(ヒト)
世界人口の3割が感染していると推測されているが、有病率に地域差があり、フランスやオランダは8割以上に対し、日本は1割程度。
感染経路(ヒト)
1)食肉を加熱不十分で摂取する経口感染。すべての種類の食肉が感染源となりうる。また、包丁やまな板などを介して食材が汚染されることもある。感染源としては、後述のネコの糞便よりも、こちらの食肉を介した感染の方が多い。
2)ネコの糞便からの経口感染。ただし、感染ネコがトキソプラズマを排出するのは、初感染の際の数週間に限られます。さらに、排便されて1〜2日は感染力を持たないため、この間に糞便を処理すれば感染を予防できます。ネコと触れるだけで感染するわけではありません。要するに、、、通常の室内飼育の飼いネコであれば感染源としてはそれほど重要ではありません。
3)妊娠中の初感染による胎児への胎盤感染。
感染経路(ネコ)
1)食肉を加熱不十分で摂取する経口感染。
2)他のネコの糞便からの経口感染。
3)ネズミなどの捕食
予防
1)食肉は十分加熱する。
2)食肉を調理した後のまな板、包丁、手指は流水でよく洗う。
3)ガーデニングや畑仕事などの後はよく手洗いをする。
4)ネコの糞便は速やかに処理する。
5)飼い猫は室内飼育にし、生肉を食べさせない。
クレッセ動物病院 獣医師 永嶋