てんかん(癲癇)
「てんかん」は古くから存在が知られている病気の一つです。古代ギリシャの哲学者「ソクラテス(紀元前469年頃〜399年)」も発病したといわれています。発作時の激しい全身の痙攣から、昔は神や霊の仕業などとされていました。イヌでは約1%、ネコでは1%以下の発生率といわれています。
てんかんとは
脳では、普段から規則正しいリズムで微量な電気が流れています。しかし「てんかん」では、普段は普通に生活しているのに、脳の神経細胞の過剰な放電により突然発作を起こします。この発作は、繰り返し起こり程度も様々です。又、脳以外の原因(心臓病等)で起こる発作は「てんかん」ではありません。
分類
「てんかん」は色々な原因によって起こる慢性の脳の病気ですが、この原因によって大きく2つに分類されます。一つは原因がないのに発作が起こる「特発性てんかん」、もう一つは脳に目で見てわかるような原因がある「症候性てんかん」です。原因には、脳の外傷・脳腫瘍・脳炎・水頭症などがあります。イヌでは特発性、ネコでは症候性てんかんが多いようです。
症状
てんかん発作」は色々な発作のタイプがあり、脳全体が一斉に興奮する「全般発作」、脳の一部が興奮する「部分発作」に大きく分けられます。「全般発作」は、全身がピーンと伸びたり、横転したり、ひっくり返ったり、足や口を細かく震わせたり、犬かきで泳ぐような運動がみられたりします。これらは数十秒から数分続き、意識はなく、失禁したり脱糞したり口から泡を吹いたりすることもあります。 「部分発作」は、興奮した脳の一部が担っている体の場所だけに症状が出ます。例えば、前足だけが痙攣したり、顔だけが痙攣(けいれん)したりし、通常意識はあります。
検査
問診、身体検査(神経学的検査)、血液検査などを行います。発作時の動画撮影が診断の助けになることもあります。場合により、2次病院での特殊な検査(CT/MRI検査、脳波検査、脳脊髄液検査など)を勧めることもあります。
治療法
「特発性てんかん」では、抗てんかん薬の内科的治療を行います。多くは一生涯服用します。完全に発作を無くすのは難しく、発作の頻度を減らし、1回の発作の強さを弱くすることが目的となります。3ヶ月に2回以上の発作がある場合に治療対象となります。「症候性てんかん」の治療は原因により様々です。
一回の発作が5〜10分経っても終わらない、あるいは1回の発作が終わる前に次の発作が始まってしまう場合(発作重積)、短期間に何度も発作を起こす場合(群発発作)などは早期治療が必要となります。又、発作時にしてあげられる事はあまりありませんが、周りの危険なものを退かして二次的な事故を防ぎ、発作後に体温が高いようなら適度に冷やしてあげてもよいかもしれません。そして、発作中には手を出さないように(咬まれる危険があるので)しましょう。
クレッセ動物病院 獣医師 永嶋